実行委員:有馬圭亮よりご挨拶
私は8年前より左手の音楽の普及・復興を行う「左手のアーカイブ」プロジェクトの一員として、この音楽分野の普及に努めています。左手の音楽の歴史で特に重要になってくる人物が、100年前のオーストリアのピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインです。
彼は第1次世界大戦で従軍し、戦闘中に右手を負傷して、シベリアで捕虜生活を送りました。帰国後、彼は左手のピアニストとして生き、その演奏は人々に勇気を与えました。彼が作曲家に委嘱した作品は今日重要なレパートリーであり、彼の生き方や音楽に対する姿勢は、左手のピアニストとして生きる私に力強い指針を与えてくれます。
パウルの意思や楽曲を受け継ぎ、未来へ繋げていくことは私の使命であります。今回彼の故郷であるオーストリアで彼の関わった作品や、彼と同じオーストリア=ハンガリー帝国の捕虜たちが演奏した楽曲を再現できることは、時を越えて彼らと繋がる思いがするのです。
昨年の暮れ、長年捕虜の研究をされており、シベリア捕虜のパウルにも識見をお持ちだった大津留厚先生と出会うことができ、日欧の修好150年という年にこのプロジェクトがスタートになりました。
青野原捕虜たちが残した手紙や写真、制作物の展示会はこれまで注目されていなかった歴史の一端を見ることができる重要な会になるでしょう。
私は音楽で、当時の捕虜たちの思いを子孫の方、現地の方に繋ぐ役目を果たしたいと思います。また100年前、彼らが西洋の音楽を日本に紹介してしてくれたこと、そして左手の音楽の礎を作ってくれたパウルへの感謝を示せたらと思っております。
左手のピアニスト・左手のピアノ国際コンクール実行委員 有馬圭亮
「左手のアーカイブ」プロジェクト http://www.lefthandpianomusic.jp/
ウィトゲンシュタイン記念 左手のピアノ国際コンクールhttp://lefthandpianocompetition.com/